第二連載 グロマコン経営指南
 

                 経営コンサルタント 久崎 力 氏


      久崎先生は、大手総合電器メーカーに長年おられ、現場から営業
     部門、海外子会社などでいろいろなご経験を積んでから、経営コン
     サルタントとしてご活躍中です。
      幅広い知識と経験を活かし、製造業を中心にご指導をなさってお
     ります。


■■■ 顧客の囲い込み ■■■

◆ ピアノコンサート運営の経験

ピアニストのVanCliburnは約50年前若冠19歳の若さでモスクワで行われた第一回チャイコフスキー国際ピアノコンクールで優勝した。当時は米ソ冷戦時代でモスクワで行われたコンクールでは、米国人は決して優勝できないという時であった、しかし米国人のVanCliburnが一位となったのである、一躍米国の英雄となりニューヨークでは30万人と言われた凱旋パレードが行われた。

私達夫婦は彼の住んでいるダラスに駐在した縁でVanCliburnピアノコンサート日本委員会事務局を引き受ける事になった。この委員会は理事長と園田高弘先生が若い優秀なピアニストに演奏の場を提供する目的で設立したもので、理事長が米国在住のこともあり全ての業務を妻と二人自宅にて行う事となった。

引き受けた時このコンサートの問題は半分も会場が埋まっていない事であった、コンサート(商品)は素晴らしいのだという大きな自信はあった。つまり品質は最高、料金は格安、市場=お客様はこの様なコンサートを求めている、其れをどうやって広くアピールするか。まず自信を持ってお客様の信頼をこつこつと得ることから始めた。

ダイレクトメールは、大切な人を心から良いコンサートに誘いたいのだという気持ちを込めて、Hart to Hart 心と心のつながりを第一とした。これが成功の一つの要因だったと思う。以降毎回会場は満員となった、どんな良い商品も買い手の心よりの信頼を得なければ継続的に販売を維持出来ない。どんなに立派なスペシャリストつまりピアニストも聴衆の協力が無ければ決して良い結果は得られないであろう。

◆ クレームのある客は関心のある優良顧客

或る時休憩時間に調律したことがあった。会員からせっかく良い音楽を楽しんでいるのに、調律の音で台無しになったとのクレームがあった。実情はピアノの線が切れたので張り替えて調律したのであった。この事情を正直にお詫びと共に説明し理解していただいたところ、会員(クレームをよく言う会員であることが後で分かった)より丁重な礼状が届いた。その後この会員は常に友人知人を誘い、心から会を応援してくれるようになった。

私が営業を統括していた時、営業員よりあの客はよくクレームをつけると聞かされていた、クレームをすることは関心があることで対応をよくすれば優良顧客に変身すると先例を用い担当者を激励した。